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「洒落男」を聴く?

絵本昭和の流行歌 番外編 其の二

洒落男を聴く

洒落男

洒落男を聴く

さて「洒落男」しゃれおとこ、ご存知ですね。
♪俺は村中でいちばん~で始まるあの歌です。
オリジナルは米国で、フランク・クルーミットという人が歌った「ゲイ・キャバレロ」という歌です。
みなさんは榎本健一でおなじみでしょうか。
しかし今回取り上げますのは二村定一盤です。
昭和五年に「洒落男(ゲイ・キャバレロ)」として発表されています。
こちらがカバー第1号で、エノケンの洒落男は実はレコードとしては戦後になってからしか録音されていないようです。

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オリジナルの歌詞はルー・クラインという人によるもので、内容はゲイ・キャバレロという男がリオ・デ・ジャネイロから都会に出てきて(アメリカの?)そこのキャバレーで出会った彼女にたぶらかされてその気になり、家まで行って口説いてたら亭主が出てきて殴られてとぼとぼ故郷に帰る。
といったものらしいです。

これを見事に日本語化した坂井透という人は慶應大学の学生にしてカレッジジャズバンドのバンジョー奏者であった人物。
この「洒落男」の伴奏をしているのはアーネスト・カアイ・ジャズ・バンドとなっていますが、これはその慶應のジャズバンドを母体としたもので、坂井氏自身もウクレレの演奏をしているようです。

実はこの坂井透という人は自分自身でも「村のしゃれ男」というタイトルでこの歌を唄っています。
二村定一の「洒落男」は昭和5年の1月にビクターから、「村のしゃれ男」は同じ年の3月にコロムビアからとなっています。
ちなみに坂井氏は権利の関係で自分の訳した歌詞が使えなかったので新たに作り直したとか。

曲はフランク・クルーミット本人です。
シンガーソングライターですね。
この曲はヒットしたのでしょうか、発表の翌年に遥か日本でカバーされているぐらいだからヒットしたのでしょうね、後にクルーミットは「帰ってきたゲイ・キャバレロ」という歌も出しているそうです。
こちらの方も売れたのかどうかは知りません。

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二村定一
二村定一

さて、二村定一です。
エノケン先生と比較するつもりはありませんが、私はこの二村定一の飄々さ加減とストレートさ具合(どんな具合?)そして何とも言えない明るさ、が好きなんですね。
この人は本邦におけるレコード歌手第1号を「東京行進曲」の佐藤千夜子と分け合おうかというほどの人で、その歌詞を明瞭に伝えるという歌唱法はミスター歌う昭和史、藤山一郎にも影響を与えたと言われています。
そんな二村定一の人物史、榎本健一との関係なんかに興味のある人は、ええと自分で調べてね。

ちなみに、私が昔の流行歌を聴くきっかけになった歌い手の一人であります。

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ということで、この歌をここで聴いても良いのでしょうか?

実は良くありません。

ですがFLASHは作りました。

前回「庭の千草」のFLASHを作った時に、あまりちゃんと出来なかったので、もう一回きちんと作ってみようと思っていて、そのテーマに「洒落男」を選びました。

なぜUP出来ない曲を選んだのかと言いますと、実は作り始めた時には大丈夫なんじゃあないかなと思っていたんですね。
JASRACによりますと、米国の作者二人の著作権は消滅していました。
二村氏は没後60年、坂井氏の没年はこの時点では未確認でしたがJASRAC的には無信託、楽曲自体も管理外でした。

これはいけるんじゃないかな、ということで作り始めたわけですが、途中で坂井氏の没年が1970年であると判明。
ああこれはだめだ、となって制作を中断しました。

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とはいえせっかくキャラクターとか作ったし、画像だけでも描き上げて、昭和の流行歌の一枚にしようかな、といろいろ調べているうちに先に上げましたところの、坂井氏自身のレコードに自作の歌詞を使えなかったというエピソードでした。
おやおや、これはどういう事?
もしかして坂井さんは最初の時点で権利ごとビクターに渡していたんじゃないのか、だとしたら出版50年の縛りとなって、それはすでに解けているのでは。
つづき作ってみようか、となったのです。
が。

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時は昭和五年です、日本著作権協会ができるのは、およそ十年後です。
我が国の流行歌の起源を「波浮の港」(昭和2)とするならば、まだわずか三年しか経っていない状況です。
往時の音楽産業の慣例のようなものもわかりません。
軽々な判断は禁物なり。
事は法律に関わる問題です、ややこしいややこしい。
ややこしい事はネット上ではやめておくが吉。

しかしその時にはすでにFLASHは完成していたのです。

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で結局どうなんだと、
FLASHを作る練習になったのは良いのですが、このまま封印してしまうのはいささかもって惜しい気もいたします。

そこで。

こういう事にしました。
長々と書き連ねてまいりましたが。

めんどくさい人はここから読んでも大丈夫です。

二村盤は聴けないので、サウンドの部分をオリジナルのクルーミット盤に差し替えました。

これでUPいたします。

Frank Crumit
Frank Crumit

曲のテンポや尺がピッタリ同じで、動画とのタイミングもまったくズレないんですけど、内容は坂井作の歌詞にあわせて作ってあるので、出来ますならばこちら等で一度歌詞をご覧いただいてから、さらに言えばしっかりおぼえてもらってから、見ていただければ有り難いのでございます。

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ということで、新年特別公開。
「絵本昭和の流行歌」番外編の番外編。
フランク・クルーミット版、当時の表記ではクラミツト版、”A Gay Caballero”をお楽しみください。

(2009年1月)

「A Gay Caballero」

 

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